
キャラクター創作部門
キャラクターを「生きた存在」にできているかどうか。わたしたちが審査したのはこの部分に尽きます。お話の中にいる存在ではなく、もしかすると現実であなたの隣にいるかもしれない存在。少なくとも、読者にそういうふうに思わせる描き方ができているかどうかを重視しました。特に、筆者が「わがこと感」をもってキャラクターに接しているかどうかを見ました。筆者がキャラクターとともに喜び、怒り、泣き、笑っているか。そしてそれを筆致に乗せているか。受賞した作品からは、物語としてのリアリティを強く感じることができました。
本賞選考にあた っての総評
ブルペンから鐘が鳴る
著者:宮瀬勝成
講評
ブルペンから鐘が鳴る、いいタイトルですね。短いながらも小説全体の雰囲気をよく現している。なによりオシャレだ、うん。
さて、これが野球の話だということはタイトルからもわかると思いますが、内容を少し。
主人公の広瀬は高校野球で日本一に輝いた豪腕投手。しかしプロになってからはなかなか成績が振るわず、トレードによって他チームへの移籍が決まる。いざ新天地へ、というところから物語は始まり。
新しいチームでは高校野球時代に優勝を争ったスラッガーが第一線で活躍していたり、ベテラン捕手に励まされたりと次第にチームにも溶け込み、若手選手に影響を与え、また影響を受け、選手としても一人の人間としても成長していく物語なのです。
ここで注目したいのはこれがスポーツを題材にした小説でありながらも、その主題は人間ドラマにおかれているという点。広瀬は色んな人と接することで確かな成長を遂げます。
なるほど、スポーツと人間ドラマは相性が良い。試合の様子なども描かれますが、その結果が広瀬の人間としての成長とリンクするんですね。いつも都合よく試合に勝つわけではない(必殺技とかもないしね)。悔しい思いもすれば落ち込むこともある。それをまた広瀬はゆっくりと乗り越えていく。笑いあり、涙あり、これがまさに人間ドラマの醍醐味ですね。
そんな本作、その面白さを支えている大きな要因の一つに、登場人物の魅力があげられます。主人公の広瀬は、甲子園のヒーローでありながら鼻につく傲慢なキャラではなく、かといって卑屈になって落ち込む性格でもない。そこが妙にリアルで、読んでいても清々しい気持ちになれます。またライバルキャラだったり後輩キャラだったり、みんなそれぞれの個性があって、なんて言うんでしょう、こういうのをキャラが立っているって言うんでしょうかね。
一方で、決してそのキャラ付けが大げさなわけではなく、ああ、普通にいるよね、というリアルさがある。現実にもいそうで、案外いない?そのバランス感覚が素晴らしいなと思います。
人間ドラマが好きな人、青春ドラマが好きな人、もちろん野球が好きな人、そして小説が好きな人。いや、やっぱりすべての人に読んでほしい、そんな作品です。
(審査員:浅田千恋)
黒い雪のポストアポカリプス ~賢者の末裔の彼女は迫害される一族の青年と共に再び世界樹の加護を復活させ春を取り戻そうと奮闘するも、王国の身勝手な保身で滅亡を避けられそうにない~
著者:天塚海人
講評
統計をとったわけではないが、Web小説で一番多いジャンルは広義でのファンタジーだろう。そして作品数が多いということは需要が、それを求める読者が多いということに他ならない。
面白いファンタジー小説には共通点がある。一つ、読みやすいこと。これは単に難しい言葉を使わずに安易な文章である、という意味ではない。文章自体に違和感がないという事が大切で、自然と物語の景色が脳裏に浮かぶ、なんならバックミュージックまで聴こえてくる、そんな文章が読みやすい小説なんだと僕は思う。
そしてもう一つ、ドキドキワクワクが止まらないということ。読者を飽きさせないスパンで盛り上がりがある。意外な展開、そして時には読者が望む展開がきちんと用意されている。登場人物がカッコいい、行動がカッコいい、台詞がカッコいい。などなど、その手法は様々考えられるが、読んでいてドキドキする、ワクワクするということが面白い小説には必須であろう。
これら二つの要素を兼ね備えた小説というのは、早く次が読みたくてたまらなくなる。ページを捲る手が(webの場合は次章をクリックする手が)止まらない。そういうものである。が、同時にそんな小説に出逢えることは幾千幾万という作品が溢れるファンタジージャンルにおいて稀であろう。出逢えた読者は素晴らしく幸福なのである。
そして今、僕はこの上なく幸福である!! それはこの小説、『黒い雪のポストアポカリプス(長いので以下略)』が先に挙げた二つの特徴をしっかりと兼ね備えた作品だからだ。
疾走する列車、襲いくる魔獣、それを狩る者、絶対的な強さを誇る巨獣モービィーディック、ああ魔獣と戦う場面では確かにBGMが流れ。陸上戦艦、病を運ぶ黒い雪、世界樹。くそぅ、ワクワクするじゃないか、バカヤロウ。重厚で緻密な世界観を舞台に動き出す人、物、そして敵である魔獣すらもカッコいい。オリジナリティ溢れる設定ながらも決して王道を踏み外さないストーリーは違和感のない文章によって支えられ、まるで映画を観ているかのような迫力を読者にもたらしてくれる。
もう一度言う。僕は今、とても幸せだ。そしてこのレビューを目にしたあなたも、たった今、幸せになる権利を確かに得たのだ。
(審査員:浅田千恋)
せっかく死んだのに異世界転生選抜トーナメントがあるなんて聞いてないんですけど? 〜チートだらけのバトルを最弱スキル【空気が読める】で生き延びる〜
著者:放睨風我
講評
「見事な即死でした、蒼太様」
「見事な即死」
「技術点がとても高く、審査員も満場一致で【オルデュール】行きが決定されました」
もらい事故により派手に吹っ飛び人生にリセマラをかました四十九院蒼太は、生と死の狭間の世界【オルデュール】へと連れてこられ、異世界転生のチャンスを得る。ただし実際に異世界転生するには、ある一定期間中に無念の死を遂げた他の転生候補者と、16名のトーナメント戦を行い優勝しなければならなかった。転生先の世界で使うことになるチート級のスキルを持つ対戦相手たち。一方、蒼太の得たスキルは明らかに強そうではない【空気を読む】というものだった――――。
能力バトルとトーナメント。この王道中の王道に、異世界転生を予定する者たちがその枠を賭けて戦うというメタ要素を融合させた意欲作になります。
優勝者はこのトーナメントの記憶を消去され転生するという設定により、もしかしたら他の異世界転生者の主人公たちもこういう熾烈な争いを潜り抜けて転生しているのかもしれないーーーーという想像が浮かびます(実際、転生を望む候補者は数多く存在するはずなので)。
面白みがありつつも非常にシンプルで分かりやすいストーリーラインというのは、それだけでとても魅力的です。その上、文章もスピード感があって読みやすい。最初はギャグも多め、中盤以降はどんどんシリアスになっていきますが、テンポが落ちないのが素晴らしかったです。
そして、随所にこのメタ設定を使った面白さが見られます。もしも本作が、異世界転生権を賭けて戦うと最初に言っただけの、ただの能力バトルものであったならそこまで興味を引かれなかったと思います。例えば、対戦前に司会が各々の【転生後の世界(小説のタイトルのようなもの)】を紹介します。これは他の能力バトル、トーナメントものと一線を画す工夫です。このタイトルに絡めた小ネタも秀逸です。
スローライフ、悪役令嬢、復讐もの、魔王もの、果てはドラゴンと化した存在まで。様々な世界の主人公候補が、蒼太とともにトーナメントを争います。彼ら一人一人の転生に至るストーリーも見逃せません。あくまでスポットライトが当たった存在が主人公なだけであって、本来皆が主人公足り得ることを思い出させてくれます。
トーナメントの運営側のサイコ感も本作の特徴です。無念の死を遂げた人間に転生のチャンスを与える。それは温情とも取れるかもしれませんが、人間目線を離れた異様な感覚であるとも取れます。
はたして【この物語の主人公】である蒼太は、自身の【空気を読む】スキルを使ってこの理不尽なトーナメントにどう挑んでいくのか。
書き手にも読み手にも刺さる部分のある王道メタ小説です!
(審査員:野良ガエル)
薬屋の見習いは平穏
著者:内野眠子
講評
見た目はヨウジョ。
頭脳は社会人三年目の薬剤師のリケジョ。
それが本作の主人公です。
いつものように出社しようと思っていたら、いつの間にか見知らぬ世界に行っていた。事故というお約束も、女神様の説明もなく、唐突に。さらには自分の姿も変り果て、右も左も天も地も分からぬ状況。
本賞で読ませていただいた作品には異世界転生ものが多かったが、本作は緩やかな立ち上がりから一気に異世界に持って行く。これは思い切りの良い判断で、書きたいところ、見せたいところが明確なのだと思った。なんの説明もないまま異世界に飛ばされた主人公は、混乱の極みに落とされることとなる。
しかし、彼女は存外に強かった。
チートとかではなく、芯が強かった。
生き延びる為、辿り着いた薬屋で、「働かせてください」と額を床に擦り付けるほどの強さを有していた。かくして彼女は「ミア」と名乗り、エルフたちの営む薬屋に住み込みかつ薄給で働くこととなる。彼女の武器は特殊能力でもなんでもなく、好奇心と理系的思考、そして社会人経験。時折フラッシュバックする薬剤師としての記憶は、社会という理不尽で戦う人間の辛さと強さを思い出させてくれる。
自らの非力さを補うために薬研(やげん:薬の素材をすり潰す道具)を導入したり、砂時計ならぬスラ(スライム)時計を作ったり、薬草から薬だけでなくアロマを抽出したり、冒険者から薬の服用後の状態を事細かく聞き取りしたり――――そんな彼女の姿は、表情に乏しいエルフたちや薬屋を利用する冒険者など、周囲の人間に影響を与えていく。
このミアというキャラクターは、おそらく転生前の本人とも絶妙に違うのだと思う。いつも通りの社会人生活の中では眠ったままだったかもしれない純粋な好奇心やチャレンジ精神。それらが見知らぬ世界で生き抜くために理系的思考と結合し、また、幼女化したことによる周囲からの扱いも合わさって、大人とも子供とも断ずることのできない絶妙な性格になっている。彼女の周囲の人間がそうなっていったように、思わず応援したくなる主人公兼ヒロインである。
新題にも書いてある通り、第二章になるとミアは貴族社会に飛び込んでいくことになり、話の雰囲気もかなり変わる。だが、その頃にはきっとミアが読者の中で定着しているはずであり、きっと彼女の成長物語を応援したくなると思う。
バトルなどはあまりない作品ではあるが、迂闊な言葉を発してはならない貴族とのやり取りなど、書き方が秀逸であるがゆえに緊張感は随所に散りばめられている。派手な展開、急展開をする小説を【映画】に例えるなら、本作は【朝ドラ】に近いと思う。一話一話丁寧に描かれる主人公のトライ&エラー。容易には全貌を見せない世界観。入り混じる様々な思惑――――。
そして、ミアという人間の成長のドラマは現在進行形で続いている。
気になった方は是非追ってみてほしい。
(審査員:野良ガエル)
「キャラクター創作」部門 最終選考結果(56作品/93作品中)
珈琲としろっぷ。 | Ai_ne |
星はいつもそばにいる | 空川星輝 |
今宵、あの藤の下にて君を待つ。 | 月音 |
ゲーム ~闇の鬼ごっこ~ | 七沢ゆきの |
ポーションの薬効を解析したら世界が激変したのですが。 | 小欅サムエ |
比翼の烏 | どくだみ |
空の歌(スカイ・ソング) | 碧桜詞帆 |
念仏代わりにレコー ドを | 桑原“無色”賢一 |
妹に迫られるお兄ちゃんの話 | まぁち |
お義姉ちゃん無双! ~甘やかしお義姉ちゃんと没落王国~ | 茶山大地 |
むかし王子で、いまダンジョン | 173号機 |
~Blade Beats!~ | 猫二朗 |
「キャラクター創作」部門 二次選考結果(93作品/131作品中)
利家と成政 ~正史ルートVS未来知識~ | 橋本洋一 |
珈琲としろっぷ。 | Ai_ne |
星はいつもそばにいる | 空川星輝 |
少年の絵 | maoria |
麦穂の乙女と三人の竜 ― Dragon kingdom ― | 入鹿なつ |
死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! ~死亡フラグを折るたびに溺愛されてます~ | あさぎかな |
水底の手紙 | 紫乃 |
目覚めたら狼獣人になってました。 | 禾野ノギ |
今宵、あの藤の下にて君を待つ。 | 月音 |
ゲーム~闇の鬼ごっこ~ | 七沢ゆきの |
ポーションの薬効を解析したら世界が激変したのですが。 | 小欅サムエ |
比翼の烏 | どくだみ |
「キャラクター創作」部門 一次選考結果(131作品/240作品中)
鶯の谷渡り | 織姫 |
利家と成政 ~正史ルートVS未来知識~ | 橋本洋一 |
珈琲としろっぷ。 | Ai_ne |
そして彼女は | のんこ |
星はいつもそばにいる | 空川星輝 |
花魔女たちの秘め事 ~魔法と幽霊と最後の願い~ | 杏うい |
少年の絵 | maoria |
麦穂の乙女と三人の竜 ― Dragon kingdom ― | 入鹿なつ |
死に戻り聖女様は、悪役令嬢にはなりません! ~死亡フラグを折るたびに溺愛されてます~ | あさぎかな |
水底の手紙 | 紫乃 |
目覚めたら狼獣人になってました。 | 禾野ノギ |
今宵、あの藤の下にて君を待つ。 | 月音 |